まずオーディオのセッティングについてです。
オーディオシステムは、部屋の長方を利用し、音の奥行き感や音がスピーカーとリスニングポイントの後方に抜ける開放感を意識して作る事が重要です。部屋の短方を利用して左右の広がり感を優先すると、スピーカーから出る音の波長をしっかりと活かせなくなり、ヘッドフォンで聴くような直接音が強調された音になります。音楽の深みや生演奏のような自然な音楽のハーモニーを演出するため、スピーカーの後ろやリスニングポイントの後ろにスペースのあるセッティングを心がけてください。
そして正面に左右のスピーカーを置き、角度はリスニングポイントに向けてしっかり内振りにします。ラックはスピーカーの中央に、スピーカーよりも少し後方に設置します。
スピーカーとリスニングポイントは正三角形を目安にし、スピーカーと背面の壁は50cm以上離し、音のバランスが低音寄りの場合はスピーカーを前に出し、高域寄りの場合はスピーカーを後ろに下げます。それと同時に、リスニングポイントも前後させて、スピーカーの設置位置との組み合わせでベストなポイントを見つけてください。
ラックは二段もしくは三段までにとどめます。それより高いと音に安定感がなくなり、音が軽くなります。パワーアンプはラックに入れるとアンプ自体の踏ん張りが効かなくなるのでラックには入れず、ラックの左右の床に直に置きます。基本的に床がしっかりしたフローリングの場合、オーディオボードは必要なく、不必要にボードを入れると音に覇気や力強さがなくなります。それはパワーアンプだけでなく、スピーカーも同様です。レコードプレーヤーやCDプレーヤー、DACやプリアンプも全て直置きの方が音が良くなる事もあります。
各機器からの振動の影響よりも、踏ん張りが大事。これ、実は凄く大切な事なのです。つまり、脚は三点支持よりも四点支持の方が機器が踏ん張る事ができて重心が下がって、音楽の深みや感動に説得力が増す。この視点を持ちながら、先入観や他者の意見に振り回されずに色々と実際に何でも試して工夫してみてください。きっと今まで以上に上手くいくと思います。
ラックの話に戻りますが、そもそもラックは必要悪ですので、本当はない方が良いのです。ボードも見た目で選ばれたという方が非常に多いです。もし設置場所に制約がない場合は、騙されたと思って「全ての機器を床に直置きする」という設置をお試しください。目から鱗、今までとは見違えるような地を這うような力強い音が鳴り響く事でしょう。それが真実ですので、ラックやボードやアクセサリーの導入など何かをやる時には、それが本当に良くなったか悪くなったかを導入時や定期的に確認する事が大切です。そうしないとそこがネックになっている事に気付かないで、後で後悔する事になります。
もちろん、床がしっかりしていない場合はボードやラックの導入で音質が向上する事があります。ケースバイケースですので、何事も先入観をなくして試してみてください。オーディオには直感は大切ですが、先入観は厳禁です。
また、音質の調整時にどちらが音質が良いか迷ったときには、「音の重心が下がる方」が正解です。音質を調整するとき、中・高域の音の抜けの良さは確保しながら、重心をできるだけ下げるように調整していくと、上手くいくと思います。
次に、オーディオの電源の取り方についてです。
まず何百万円も掛かるような大掛かりな電源の工事は不要です。私はマイ電柱や高額なブレーカー工事を行った様々なお宅を拝見していますが、この工事後に大抵のお宅で音が痩せています。さらに機器の故障などのトラブルも増えて、電源にデリケートになり、かえって悪い事が増えています。その原因についてここではあえて深く語りませんが、大切な事を2つお伝えします。
1、電源は何もしないのが一番パワフルで音が自然だという事。
2、アースはとらない事。
その二点を守って頂ければ、後悔なく安心していい環境を作る事ができます。電源工事は試聴してからの導入はできませんし、後でやり直しができません。やってしまったら、良いと思うしかないのです。それでは駄目です。自分でやり直せない状況、環境を作ってはいけないのです。
やるべき事は、壁のコンセントの極性を確認して、癖のない良質な壁コンセントへ交換してください。あとは後付けで交換可能なノイズフィルター機器をいくつか試して、いい結果が得られれば導入します。電源を作り直すアイソレーション電源は音が痩せやすいので避けます。
分電盤についてですが、もしメインの分電盤がスマート分電盤の場合、旧型の分電盤をメインのスマート分電盤の隣に増設し、そこからオーディオルームに配電するのが理想です。
オーディオルームのコンセントについてですが、二口壁コンセントが、オーディオルームの正面の壁の左右に1個ずつと、正面中央に2個、配線されているのが理想的です。タップを使用したく無い場合は、中央に5〜6個コンセントがあれば十分かと思います。
そして左右の壁コンセントには、モノラルパワーアンプの電源ケーブルを直接配線します。パワーアンプは電源タップを通さない方が音が沈みこみ、安定感のある力強いサウンドになります。ステレオパワーアンプの場合は、正面中央に二口コンセントが3個ついていれば理想で、その内の1個にステレオパワーアンプだけを接続します。
パワーアンプは大きな容量を必要としますので、同じコンセントから、デジタル機器やアナログ機器などに繋がない事が重要です。
そして正面中央の2個のコンセントには、2つの電源タップを1ヶ所ずつ別々に接続します。1つの電源タップにはCDトランスポートやDAC、NAS、PCなどのデジタル機器を、もう1つの電源タップにはレコードプレーヤーやフォノイコライザー、プリアンプなどのアナログ機器を接続します。そうする事で、ノイズの多いデジタル機器からアナログ機器への干渉を軽減できます。
コンセントの環境が異なる場合でも、上記の接続を参考にしていただき、それに近い形で接続していただけましたら良い結果が得られると思います。